コラム 認知症って?

MCI って何?

 近年アルツハイマー型認知症を中心とする認知症の患者数の増加から認知症が身近な疾患となり、認知症の知識を得ようとする方も多いかと思います。その中でよく使われるMCIという用語について簡単に説明したいと思います。
 MCIはMild Cognitive Impairmentの頭文字をとったもので日本語では「軽度認知障害」と訳されています。
 MCIの概念は「加齢変化による認知障害の段階とアルツハイマー型認知症を中心とする認知症の診断基準を満たす中間にある状態」と定義されています。
簡単に言うと、
・同年代の他の人と比較して物忘れが多いが本人はそれを自覚している
・体験したことを憶えてはいるが詳細な内容については忘れることがある
・日常生活の中で時に困ることはあるが独立して生活することは可能
というような状態です。
 MCIの方は年間10%程度が認知症に移行すると報告されていますが、一方でMCIと診断されても20~30%の方が正常な認知機能に回復するとも言われています。
 MCIの進行予防、改善対策には早期発見、早期対策が大切なことは言うまでもありませんがここで少し気をつけていただきたいことがあります。最近はMCIの早期発見のためのチェックリストなどが簡単に入手可能ですが家族がMCIではないかと疑ったからといって唐突に「MCIかどうかチェックしてみましょう。」と切り出すようなことはしないで下さい。家族の方がMCIではないかと疑っても実際には正常ということもあるでしょうし、MCIの状態であっても本人自身が薄々感じていて気にしている場合、唐突にチェックリストを持ち出すことはその後の家族関係に悪影響をおよぼし、ひいてはその後の治療にも支障をきたす可能性があるからです。診断は医療機関に任せるべきですが受診の際に普段の生活でどんなことが気になって受診のきっかけとなったのかをできるだけメモの形で記録して受診されると良いでしょう。その際メモの内容については詳細は本人のいないところで医療関係者に話すようにすることも大切です。そのためには家族の方だけで予め医療機関を受診して日頃の様子での困り事を話しておいて、日を改めて本人と共に受診するという方法もあるかと思います。
 家族の方が受診をすすめる場合、まず強引に連れて行かないようにして下さい。強引につれていくことで家族や医療機関に不信感を抱かれるようになることが心配です。本人が嫌がる場合、別の日の受診に変更するということも選択の一つです。「そんなに大げさなことではないけれども、普段の生活でこんなことが少し気になるから将来のことを考えて今のうちに病院に行ってよく相談しましょう。」などと、本人のことを心配していることを前面にだして受診をすすめるのも一つの方法かと思います。
 本人があるいは家族の方がMCIと診断された場合、進行予防、あるいは症状改善のための対策が必要です。
具体例として
・深い呼吸をしながら行う”有酸素運動”で酸素を十分に体内に取り入れ、ひいては脳への酸素供給を増やす。効果を高めるためにウォーキングしながらしりとりをするなど二つのことを同時に行う”デュアルタスク”を取り入れてより脳への血流を増加させる。
・動脈硬化予防のためリスクファクターである高血圧症、高コレステロール血症、糖尿病などがあればその治療を行う。喫煙、飲酒の習慣があれば改善する。ビタミンC,ビタミンE,βカロチンを含む野菜、果物摂取を心がける。DHA,EPAを多く含む青魚の摂取を心がける。
・好きなゲームをする(健康麻雀その他)、他人との会話を心がける、日記をつける(1日を振り返って何があったか思い出して書き留める)
などです。
 MCIと診断された場合、本人は精神的に落ち込んでしまいがちです。早期対策で改善することもあることを説明し、家族が協力して前向きに対策に取り組むことが何よりも大切です。

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