インフルエンザと普通のかぜの違い。
普通のかぜの症状は、のどの痛み、鼻汁、咳などが中心で全身症状はあまりみられません。インフルエンザは38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛など全身の症状が強く出ます。また、高齢者では肺炎が、小児では脳炎や脳症など重症な合併症が問題となります。年間100-200人のお子さんがインフルエンザの脳炎、脳症で死亡しております。発熱から数時間から一日という非常に短い時間のうちに起こります。
インフルエンザワクチンの接種は効果があるのか。
厚生科学研究費による「インフルエンザワクチンの効果に関する研究」の報告によると、65歳以上の健常な高齢者については約45%の発病を阻止し、約80%の死亡を阻止する効果があったとしています。同じく「乳幼児に対するインフルエンザワクチンの効果に対する研究」では、1歳以上6歳未満の幼児では約20-30%の発病を阻止する効果があり、1歳未満の乳児では対象症例数も少なく、効果は明らかではなかったとしています。また他の報告では0-15歳では1回接種では68%、2回接種では85%、16-64歳では1回接種では55%、2回接種では82%の発症予防効果であったとしています。
ワクチンの効果は、年齢、本人の体調、そのシーズンのインフルエンザの流行株とワクチン株の合致状況によって変わります。インフルエンザのワクチンを接種することによって、インフルエンザによる重篤な合併症や死亡を予防し、健康被害を最小限にとどめることがある程度期待できます。
インフルエンザワクチンでインフルエンザ脳症を予防できるのか。
厚生労働科学研究班におけるこれまでの調査では、インフルエンザ脳症を発症した事例の間で、ワクチン接種の有無について有意な差はなく、ワクチン接種することによってインフルエンザ脳症が予防できるという明らかな効果は見出されていません。
ただ、インフルエンザワクチン接種によりインフルエンザの発症が防げるならば、論理的にはインフルエンザ脳症の発症を軽減できると考えられます。脳症は発熱から数時間から1日という短時間に発症するため、インフルエンザの診断治療が間に合わず、ワクチン接種のみが現段階では予防として有効であるという意見があります。
インフルエンザワクチンはいつごろ接種するのが効果的か。
インフルエンザワクチンは接種から効果が現れるまで通常約2週間かかり、約5か月間その効果が持続されます。インフルエンザの流行は12月下旬から3月上旬が中心となります。12月上旬までに接種するのがおすすめです。
13歳未満のお子さんで2回接種する場合、接種時期に余裕があるならば、まず、11月に1回接種して3-4週間あけて2回目接種することをお勧めします。
インフルエンザの治療薬、リン酸オセルタミビル(商品名タミフル)の扱いはどうなっているのか。
2001年よりタミフルは保険の適応となり使用により発熱時間と罹病期間を短縮することができ、近年一般に広く使用されてきました。2007年2月28日厚生労働省より医療関係者に次のように注意喚起が行われました。「万が一の事故を防止するための予防的な対応として、特に小児、未成年者については、インフルエンザと診断され治療が開始された後は、タミフルの処方の有無を問わず異常行動発現のおそれがあることから、自宅において療養を行う場合、異常行動の発現のおそれについて説明すること、少なくとも2日間、保護者等は小児、未成年者が一人にならないよう配慮すること」さらに2007年3月20日厚生労働省は薬剤会社を通じて緊急安全情報を出し、原則10歳以上の未成年の患者においては使用を差し控えることになりました。
その後、2008年7月厚生労働省研究班はタミフル使用と異常行動発現の間に関連なしの報告をおこないました。根拠は2006年から2007年にインフルエンザと診断された18歳未満の約一万人の患者においてタミフル内服した患者から異常行動を起こした人と服用しなかった患者から異常行動を起こした人の間で有意な差がなく、むしろタミフルを飲んだ患者の方が異常行動をおこした人が少なかった。また上記の10代への処方差し控えを決めた前後で異常行動の発生状況に変化がありませんでした。ラットによる動物実験、臨床試験による報告でも因果関係は否定されました。
これらの結果を踏まえて2008年8月に10代への処方が解禁される方向で検討される予定でありましたが、一部データ処理のミスが見つかり、厚生労働省は8月5日、調査結果を再検討すると発表しました。調査会は延期され結論は10月現在まだでていません
文責:担当理事
(参考)
国立感染症研究所 感染症情報センター ホームページ
http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/fluQA/index.html
インフルエンザ脳症ガイドライン
http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/051121Guide.pdf
読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20080711-OYT8T00278.htm?from=nwlb
読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20080806-OYT8T00341.htm