公益社団法人射水市医師会

 2007年、大学生を中心にした「成人麻疹」の流行が起き、大学の相次ぐ休校や、学外実習の中止など大きな社会問題となりました。その流行の中心となったのは同世代の大半が麻疹含有ワクチンを接種しているものの、そのワクチン接種から10年以上が経過した10代、20代の年齢層でした。ワクチン接種後に長い間麻疹の流行にあう機会がないと、ワクチンで獲得した免疫が弱くなります。麻疹の発症を予防できる免疫が低下したときに麻疹流行にあうと、ワクチンを受けていた一部の人は軽い麻疹にかかります。これを修飾麻疹といいます。免疫が適度にあると、感染により抗体は十分にあがるため発症は予防されます。
 2007年に成人麻疹が流行した主な原因は、ワクチンを受けずに成人になった人(10%)、ワクチンを受けたが免疫がつかなかった人(2-3%)、ワクチンを受けたが免疫が低下した人(10%)が大学に集まり、そこに麻疹ウイルスが持ち込まれたためです。さらに日本各地の大学に学生交流とともに麻疹流行が拡大しました。
 2008年1月からすべての医療機関に対してすべての麻疹発症例の報告を求める麻疹全数把握調査が開始されました。2008年1月1日から始まった麻疹発生動向調査によると、3月26日までの12週間の麻疹患者発生報告数は331例です。現に今、日本の中で麻疹にかかっている人がいるのです。
 2006年4月1日から予防接種法に基づく定期予防接種として麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)が導入され、2006年6月2日からMR2回接種が開始されました。しかし、これだけでは今後の中学、高校、大学等での集団発生を予防できないため、2008年4月1日から5年間の時限措置で、現行の1歳児(第Ⅰ期)および小学校入学前1年間の小児(第Ⅱ期)に加えて、13歳になる年度(中学1年生相当年齢の者、第Ⅲ期)、および18歳になる年度(高校3年生相当年齢の者、第Ⅳ期)の者に対して、2回目の接種機会として、麻疹風疹混合ワクチンの定期予防接種が開始されました。
 麻疹は極めて感染力が強いウイルス感染症で流行を阻止するための集団免疫率は90-95%です。このため、麻疹流行を排除するためには、麻疹ウイルスを含むワクチンを私たちが所属する集団が95%の高い接種率で接種する必要があります。MRワクチン接種に対しての保護者のみなさんのご理解、ご協力をお願いします。

( 参考文献 こどもの感染症の診かた 麻疹 2008.5 vol.11 )

 

文責 担当理事

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